3-3. イベント(その他)

大昆虫展を終えて
私が大昆虫展のことを知ったのは2006年の総会の時であり、その時からボランティアとして活動しようと考えていた。大学に募集のチラシが来ていることを知ったのはその翌年の5月で、締切り間近であったため急いで申込用紙を送ろうとしたが自宅のファクシミリが故障し、速達を出しに郵便局へ走った記憶がある。
ボランティアのミーティングは何度かあり、大学の都合もあった私はあまり出ることができなかったが、何とか全体の空気をつかむことができた。2007年の間は本番を盛り上げるための予備企画や下準備といった意味合いで、昆虫に関する様々なイベントを行いながら本番の企画を練り上げていく、といった作業が主だった。ボランティアの募集は小学生以上ということだったが、実際に集まったのは小学生から中学、高校、大学生、主婦、第二の人生を歩んでいる方など、様々な年齢層にわたっていた。中には、私のように「虫屋」に分類されるような人、普段から博物館と深く関わっていてボランティア経験もある人、昆虫の飼育を楽しんできた人、子供のころは虫取り少年で現役時代は虫から遠ざかっていた人、虫に興味がありこれから勉強しようと思っている人など、様々なタイプの人々がいて、それぞれ昆虫展へ特別の想いを持っているように見受けられた。その総数は60人ほどで、うち20人は昆虫館で知られる成田西陵高校の地域生物研究生物部である。後で考えてみると、実働部隊として活躍したのはボランティア全体の半分弱であった。担当の研究員は斉藤先生と宮野先生の他に、アリを専門としている山口先生であった。
実際に私が参加したのは、生き虫に触らせるイベント「虫にさわろう!」と、生態園で昆虫を採集して標本も作れるという特別企画「生態園昆虫調査隊」、標本作りを実演して教える「虫の標本作りなんでも相談」で、それぞれ2回ほど実施された。これらのイベントは、子供だけでなく大人にも好評で、来年の手応えを感じさせた。
秋口に入ると、本番に備えた準備が始まるようになった。広報用のイベント名や企画内容の詰め、展示物の確認や標本の移動。私は冬休みを利用して、展示物リストの打ち込みや外国産カブト・クワガタを保存してあった箱から抜き出す作業、亜種の整理を行ったほか、色ごとに昆虫を展示する箱に甲虫とチョウしか入っていなかったのを見つけ、トンボや双翅、膜翅、半翅、そして直翅を入れてほしいと斉藤先生に頼んだりした(鈴木さん、ごめんなさい)。
今年度に入って、ユニフォームTシャツを作るという話が具体的に聞こえてくるようになり、デザイン画像が郵送されてきた。黒地に鮮やかなカミキリムシが浮かび上がる、ポスターと同じそのデザインを見たとき、いよいよ始まるのだ、と強く感じた。その後、私が大学の実習レポートに忙殺されている間に、大昆虫展は幕を開けた。その翌週、あわただしく出来立てのユニフォームTシャツに袖を通し、券売所を抜けると、話に聞いていた巨大段ボール昆虫と、企画書で見た巨大な写真パネルが迎えてくれた。展示室に足を踏み入れると、まずは奥にそびえる写真パネルが目に飛び込んできた。その日はまず、展示を見て回った。図鑑などでよく知っている虫、収蔵庫で見たことのある虫、見たことも聞いたこともない虫まで、様々な昆虫がドイツ箱に収まり、壁一面に配されている。子供に人気の外国産甲虫群や、マニア垂涎のデリアスやパルナシウスのオンパレード、PARA TYPEが散見される日本産クワガタの箱、世界初公開(裏付けなし)の巨大カッコウムシ、斉藤先生が趣味に走ったカミキリムシコーナーと驚異のサソリカミキリ・・・その物量と多様性、配置の巧みさに圧倒された。企画展示室は開放的なレイアウトで、一目で見渡せてしまうが、一つ一つの標本に向き合っていると丸一日を軽く消費してしまうだろうと感じた。
7月の半ばからワークシートが開始され、私もその答え合わせをメインに行うようになる。初めはそれほど大変ではないだろうと考えていたが、必死にシフト表を埋めようとする他の人の姿を見ているうち、これは大層なものなのではないかと思うようになった。そして、実際にその仕事はかなりの重労働だと知ることとなる。狭いコーナーに貼りつき、子供の持ってくるワークシートを採点し、全問正解のレベルがあればそれに応じた絵葉書を景品としてプレゼントし、必要ならば解説を行う。同じような説明を1日に何度も繰り返す毎日が始まったが、その中でも様々な発見があり、説明はどんどん変化していった。また、レベル1の景品は人面亀虫として知られるオオアカカメムシだが、レベル2のギラファノコギリクワガタが欲しいとぐずる子供や、1枚も絵葉書がもらえないことに不満を露わにする保護者など、多様な人間と接するにつけ、社会勉強にもなったと思う。コーナーに座っていると、展示の説明を求められたり、何の虫か分からない、といって写真を持ってきたりするお客さんもおり、より多くの人に昆虫について知ってもらえたと思う。
この2ヶ月弱を過ごしてみて、昆虫という題材のもつ奥深さを改めて実感した。ボランティアとして集った人達や客として訪れた人達を見ても、多少子供が多いにしても、老若男女の隔てなく昆虫に興味を抱いていることが分かる。また、ボランティアの間で様々な情報交換を行う機会があったが、その中で、昆虫の前では皆平等なのだと感じた。子供も大人も老人も関係なく、それぞれに知識や経験、技術をもっており、それぞれ他人に教え、共感するに値するものを秘めている。それほど普遍的な題材が他にあるだろうか。そして何より、博物館のバックヤードで多くの研究員の方々と話す機会を得て、面白い話を聞かせて頂くことができた。ちなみに私は開催中に体重、体脂肪率ともに大幅に減少し、文字通り昆虫に身を捧げ、昆虫に燃え尽きた夏となった。残すは後片付けであり、これは徐々に盛り上がっていく準備とは対照的に、気長な作業となりそうである。(小川 洋)

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